小さくいびつな一歩●小さくいびつな一歩を踏み出せるか? (前略) 例えまたどん底に落ちたとしても、必ずまた這い上がることができると。 それは何も、私がどん底の生活の中で借金を踏み倒す術を覚えたからではありません。人にうまく取り入る方法を知ったからではありません。 ただ一つだけ、私がここまで這い上がることができた理由があるならば、それは「まったく知らないところから、小さくいびつな一歩を踏み出してきたこと」です。 (中略) ここに、私がいつも思い描いている、「必ず無から有を生み出せる人間」のイメージがあります。 25メートルのプールを想像してください。 「このなみなみと張られた水を、栓をぬく以外の方法で、すべて空っぽにしてほしい」 そう言われたとき、あなたはどんな行動をしますか。 どのようにしてこのプールいっぱいの水をすべて空っぽにするでしょうか。 しかも、目の前には小さなおちょこしかないとしたら。 ここに、「無」から「有」を生み出すことのできる人間かどうかの分かれ目があります。 プールに張られたこの水をおちょこですくって出そうものなら、きっと膨大な、果てしない時間がかかるにちがいない。 なんてバカげたことだと思うでしょう。 しかし、ここなんです。 何もないところから「有」を生み出せる人間は、ここでおちょこを使って、まず水を汲み出しはじめるのです。 「え?こんなの汲み出せやしないよ」「もっといい方法を探してから」なんてことは言いません。 そう言っている人間の隣でまず、この小さな一歩を踏み出してしまうのです。 たしかにおちょこを使って汲み出すなんてバカげてます。 そんなもので汲み出しきれるはずはありません。 しかし、不思議なことに、ここでおちょこでもって水を汲み出し始められた人間は、必死におちょこで汲み出しているうちに、少し先の手洗い場に、プラスチックのコップを見つけるのです。 バカげた一歩を踏み出したその足が、効果的な手段を見つけてしまうということでしょうか。 そして、コップを使って汲み上げている彼は、プールのフェンス越しに、今度は花壇の脇にバケツが転がっているのを発見するのです。 そう。おちょこがコップになり、そしてバケツを見つける。 次はポンプを見つけてくるかもしれません。 そうして一気に水を汲み上げるのかもしれません。 目標に向かって、どんなに効率が悪く小さくとも、まずその一歩を踏み出し始められる人間は、結果として恐ろしいほどの効率のいいやり方で目標を達成することになります。 多くの人が「おちょこで水を汲み出すなんて、百年かかっても無理だ、バカげている」と言って始めようとしないなか、その小さなひと汲みをまず始められた人だけが、成功を手にするのだと思います。 それに、たとえバケツやポンプが手に入らず、ずっとおちょこで汲み出しつづける人生を送ったとしても、それはそれでいい人生だと思うのです。 少なくとも、ダメだダメだと言っているだけで何もしないよりは生産的です。 私の人生も、すべてこの「いびつな一歩」からスタートしたということは言うまでもありません。 効果的な手段を探して用意周到に事を進めることももちろん大切なのかもしれませんが、少なくとも私をどん底から這い上がらせてくれたのは、このとにかくスタートしてしまう精神でした。 堀之内九一郎(「どん底からの成功法則」 サンマーク出版)より ジャンル別一覧
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